「会計の世界史」を読んで

こんにちは、筋肉めがねです。

 

3月29日に予定されていたBrexitは、イギリス議会が離脱協定案を3度にわたり否決した結果、EUがBrexitの期限を10月31日まで延期しましたね。先日UKに出張に行き、現地の方とお話する機会があったのですが、現地の方達は、期限を延期したところで、ま与与野党が揉め「合意なき離脱」となるのではないか、と懸念しておりました。

一方で、企業においては、Brexit特需という言葉もあるようで、3月末に「合意なき離脱」が起きると想定していた企業は、その時期に混乱したであろう物流網がもたらす悪影響を減らすべく、先にUKへ仕入れる在庫を増やしておく、という措置を取ったとの事です。例えばUKにおける飲料販売会社が、海外の飲料メーカーへの注文を少し前の時期に増やしたようですね。飲料メーカーはBrexit特需の恩恵を受けたようです。

10月31日に果たしてBrexitが起きるのか、目が離せません。 

 

さて、積読していた「会計の世界史」をようやく読みきりましたので、久しぶりに読書感想文を書いていきます。 

 

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

 

 

10数年前の春、無事に就職活動を終えた時期に、周囲の方から勧められて簿記を勉強していた事がありました。簿記を勉強しておくと会社に入ったら役に立つぞ、と。そんな簿記でございますが、一体全体どういう背景でこの世に出てきたのか、そんな疑問を解決してくれる良書が「会計の世界史」でございます。簿記が世に出てきた背景だけではなく、財務会計が発展してきた経緯、管理会計が必要となってきた時代の流れ、そしてコーポレートファイナンスが台頭してきた近代に至るまで、その時々の世の中の状況を分かりやすく説明しており、とても面白い読み物でございました。

 

中でも幾つかのポイントをピックアップして、以下書いていきます。

 

今から約500年前、経済の中心はイタリアであったそうです。当時、東方のインドや中国からの品々がイタリアへ運ばれ、そこからヨーロッパ各地へと運ばれた、という事です。イタリアは絶好の立地にあったわけですね。そんなイタリアのヴェネツィアではガレー船を使った商売が発展していました。

ガレー船という大きな資産を手に入れるためには、銀行から借入しないといけません。それで、当時銀行の先がげであった、バンコと呼ばれた金貸業がイタリアで生まれました。船を使った商売では、同業である他の商人たちと一緒に商売をすることもあったそうです。ですので、「儲けの分配」を明確にする必要があったんですね。

また、各地にネットワークを広げたバンコもまた、融資や回収、為替手形の発行や決済といった取引記録をつける必要に迫られた、ということです。

これら二つを満たすために簿記は生まれた、とのことです。つまり、簿記をつけるメリットは儲けの分配をできる事と対外的な証拠の役目を果たす事(つまり対外的なトラブルを減らす事)にある、ということです。

 

時代は1800年代中盤、イギリスへと移ります。当時、鉄道建設ラッシュが起こっていたイギリスですが、当の鉄道会社には大きな問題がありました。それは事業を始めるための初期投資が大きすぎることです。列車、線路はとてつもなく大きい固定資産です。それら手に入れるのも容易ではありません。大きな資金を手に入れる、という問題がたちはだかりました。イタリアでガレー船による商業が栄えていた頃、株主といえば、家族・親族でした。それを、イギリスの鉄道会社は、株主の枠を一般の株主へと大きくひろげ、 桁違いの資金を得る事に成功した、とのことです。しかし一つ問題がでてきました。例えば、初期投資を行った年に株主であった場合、初期投資による大幅な支出により配当がもらえる事は皆無でしょう。そして、二年目、三年目に株主となった場合、明らかに一年目に株主であった場合よりも、配当は多くもらえます。つまり、株主であった時期の違いにより「儲けの配分」に大きな差がでてくるのです。

これは困ったぞ、と。

そこで考案されたのが「減価償却」という概念、という事です。なるほどですね。

「減価償却」がすでに行われた支出を後から計上する方法であれば、その逆もあるんですね。「引当」です。将来発生する事が確実である支出を前もって費用計上しておく事ですね。

これらの考え方が発展してきた背景は鉄道会社の勃興という事です。

 

舞台はアメリカに移ります。アメリカで鉄道建設ラッシュが起きていた頃、移民とともに、投資マネーもイギリスからアメリカへと流れてきます。そうすると投資家は、投資する対象の経営状況を分析する必要が出てきます。この当時、19世紀後半には「経営分析」ブームが起きているようです。流動比率の分析などですね。それらの分析を行うには、決算書が必要となってきます。こうした背景があり、財務会計が発展してきた、という事です。投資家に対する財務状況の開示ですね。

 

事業の規模が拡大してくると大量生産をする必要がでてきます。アメリカの鉄鋼業では大規模生産のできる工場がでてきました。複数の部品を複雑な工程を通して作る大型の工場の場合、さまざまなコストをどうやって製品原価まで落とし込むかの手順を考えなければなりません。このための仕組みが「原価計算」なんですね。原価を計算しない事には売価を決定できませんよね。この「原価計算」が管理会計の始まりだそうです。財務会計が外部に対する情報の開示に必要な仕組みだとしたら、管理会計は会社内で利用するための仕組みですね。例えば限界利益や損益分岐点は管理会計の代表的な指標です。

そして、さらに舞台は現代へと移ります。

20世紀後半、産業は工業から情報へと次第に移ってきていました。同じような時期に、それまでには考えられなかったモノが、次第に資産としてみなされるようになります。例えば、「独自のノウハウ」やら「ネットワークの強み」やら。アメリカでは、それら「隠れ資産」を狙って買収してくる輩が現れてきたわけです。では、どうやって「隠れ資産」を持つ企業の価値を算定するのか。そこで登場してきたのがコーポレートファイナンスです。将来のキャッシュフローを元に、現在価値に割り戻すんですね。ここで生まれた「企業価値」という概念がファンドやM&Aを後押ししていくんですね。

 

イタリアでは、簿記を理解して帳簿をつける事が、数字の力でした。そして、産業革命が起きたイギリスでは会計の大事なポイントである「減価償却」「引当」という概念が生まれ、アメリカでは投資マネーの流入から財務会計が確立され、大量生産が台頭してきた事により管理会計が作られ、投資マネーの拡大によりコーポレートファイナンスが発展してきたんですね。

 

とても面白い読み物でございました。

それでは、本日は以上でございます。